1. 免疫力がアップする。
「笑いや笑顔には、ナチュラルキラー細胞という免疫細胞を活性化させ、免疫力をアップする効果があるのです。既に、病気の予防に生かす取り組みも広がっています」と菅原さんは言う。
笑えるテレビ番組や映画を観るなどして、ひとりで笑っていても効果的だという。「つくり笑いでも、口角をあげて微笑んでいるだけで、表情筋の動きは脳に伝わりますので、ひとりで過ごす時間に免疫力を高めることができます」
人と笑顔で向き合うことでも、お互いの免疫力がアップする。にっこり笑顔で挨拶を交わすだけでいいのだから、むっつりと無表情でいるのは、せっかくの免疫力を高める機会を逃している、ともいえるのだ。
「笑顔を絶やさずにいることが、健康や命を守ることに繋がるといっても過言ではありません」
2. 最強のエイジングケアになる。
「ホンモノの笑顔には、顔のリフトアップ効果が期待できます」と菅原さん。
笑顔は「デュシェンヌ・スマイル」と呼ばれるホンモノの笑顔と、つくり笑顔などの「ノンデュシェンヌ・スマイル」に分けられる。笑顔に表出する比率で算出される「デュシェンヌ・スマイル」は、目尻が下がり、口角と頬が引き上がっているのが特徴だ。
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「笑顔は顔の筋肉である表情筋の動きによってつくられています。笑顔が素敵な人は、表情筋の動きがスムーズです。つまり筋肉がきちんと使えている、そして笑顔によって鍛えられているということです。反対に表情筋が硬く動きにくいという人は、どうしても笑顔もぎこちなくなります」
確かに、しかめっ面の人は頬も弛んでいるような気が……。
「私が行った実証実験では、デュシェンヌ・スマイルを自分の意思で作ることができた人はわずか23%。本人は笑顔のつもりでも、できてない人が77%もいる、という結果が出ました。被験者は大学生なので加齢による筋力の低下などの影響は考えにくく、表情筋が動きにくい、または動かせていない人が多数いるといえます」
つまり、それは7割以上の人が「タルミ予備軍」ともいえるのだ!
3 . 表情筋が刺激を受け、ポジティブな気持ちになる。
笑顔になることで顔の表情筋が刺激を受け、それが脳にフィードバックされると、ポジティブな感情が生まれる。それが、アメリカの心理学者トムキンス氏が発表した「顔面フィードバック仮説」だ。
「顔の筋肉は、感情を司る脳のA10神経群が密接に関係していることから、脳科学の視点からも、笑顔を浮かべていると脳が楽しいと勘違いしてポジティブな思考になりやすくなります。反対に、しかめっ面をしているとポジティブな気持ちにはなりにくい、ともいえるのです」
大人になると、ネガティブな気持ちをごまかすための笑顔もつくれるようになる。だが、「表情には、“感情の足跡”が残るんです」と菅原さんは言う。
「3分間、ネガティブなことを考えてから笑顔をつくると、ネガティブな感情の足跡が笑顔に残るということが実験の結果、判明しました」
それは、笑顔が自律神経に作用していることが関係していると考えられるのだそう。
「自律神経には交感神経と副交感神経があり、ネガティブなことを考えているときはストレスを感じているので交感神経が優位になります。自律神経を自分でコントロールすることは難しいので、笑顔をつくってもすぐには切り替わらず、ネガティブな考えをしていた後の笑顔にも影響している可能性があるのです」
心と表情は密接に連携しているのだ。
4. コミュニケーションがスムーズになる。
「以前、ある企業の依頼を受けて、その会社の商品の売り上げ上位の販売員と、下位の販売員の笑顔を分析しました。すると、売り上げ上位の人たちは全員がデュシェンヌ・スマイルの持ち主。一方、売り上げ下位の人たちは極めて笑顔がぎこちないという結果が出たのです。つまり、人は販売員のセールストークや商品知識でモノを買っているのではなく、販売員の笑顔が購入の決め手になっているのです」
これは、「デュシェンヌ・スマイルを見た後に、見た商品がよりよく見える効果」「笑顔の人を見ると気分がよくなる効果」によるものだと考えられるのだそう。
また、重要なのは笑顔が多いかではなく、笑顔の“キャッチボール”ができているかだという。
「むやみに笑っていればいいのではなく、笑顔のタイミングが噛み合っているか、が大切です。この法則は、販売業の人だけでなく、営業や商談、プレゼン、お見合い、面接などにも言えることです」
笑顔は人生をよりよくする、最大のコミュニケーション術でもあるのだ。
5. 笑顔は周りに伝染する。
「もともと人の脳には“顔細胞”という、顔や顔のように見えるモノを瞬時に認識する機能が備わっています。車のフロント部分や天井の染み、野菜など顔ではないモノに、顔っぽさを見つけるのはそのせいなのです」
つまり、人は無意識のうちに人の顔に敏感に反応している。
「赤ちゃんが人の顔をジーッと見つめるのもそのためです。かわいい赤ちゃんに見つめられると、こちらも笑顔がこぼれますよね。赤ちゃんは特に笑顔に反応しますから、その顔を見て笑ってくれるとさらにうれしい気分になります。これと同じことが、大人同士でも笑顔の人に出会ったときに起こっているのです。笑顔は人から人へと伝染します」
私たちは、顔細胞の働きによって表情に敏感に反応し、反射的に伝染していく。自分以外の個体の行動を見て、自分が同じ行動を取っているかのように反応する脳の神経細胞「ミラーニューロン」が働くからだ。
「笑顔の人につられて笑顔になると表情筋が刺激されます。すると、ドーパミンやエンドルフィン、セロトニンといった快に関する神経伝達物質が分泌され、気分がよくなるのです。すると、相手もまた笑顔につられて笑顔になるので、お互いにいい気分が伝染するのです」
デュシェンヌ・スマイルの人が人気者なのは「あの人の笑顔を見ると、自分も笑顔になってよい気分になる」から。笑顔は循環し、増幅していくのだ。
6. 幸福度がアップする。
笑顔が素敵な人をみると「あの人は、きっと幸せだからあんなに素敵な笑顔なのだろう」と思ってしまう。しかし、菅原さんによると「笑顔が素敵だから、幸せになっている」のだという。
「カリフォルニア大学の教授らが行った女子大での研究によると、卒業アルバムの写真がデュシェンヌ・スマイルだった女性とそうでなかった女性の30年後の幸福度を測った場合、デュシェンヌ・スマイルの女性のほうが、結婚生活の満足度が高く、心理的に安定している傾向があったのです」
心身の健康が幸福度に繋がるほか、仕事のチャンスや素敵な出会いは、人を介してやってくるものだ。
「デュシェンヌ・スマイルができる人は、気持ちがポジティブなのでポジティブな発言が多い。さらに笑うことで脳がオキシトシンを分泌し、自分だけでなく相手も幸福度が高まることもわかっています。そうすると、信頼関係を築いたり、助け合あうことが円滑になる。こうした要素が絡み合って、自分に幸せが返ってくるのでしょう」
笑う門には福来る、ということわざどおり、デュシェンヌ・スマイルが幸せを呼び込んでいるのだ。